データ取得が終わらない。
画面の中央には細いバーが出ていて、左から右へ少しずつ色が満ちていくように見える。けれど、よく見ると進んでいるのかどうか怪しい。九割あたりまで来たような気がしたあとで、しばらく席を外して戻ると、また同じ場所にじっと止まっている。表示はずっと 取得中 のままで、何かが働いているようにも、もうとっくに諦めているようにも見える。
待っているだけの時間というのは、妙に身体にこたえる。
立ち去ってしまえばいいのに、私は机の前に残ってしまう。もう少しで終わるかもしれない。次の画面へ進めるかもしれない。そう思うと、完全に背を向ける気になれないのである。指先だけが落ち着かず、何度も更新ボタンの近くまで行っては戻る。
ほんとうは早く先へ進みたいのだった。
取得が終われば、次にやることがある。整えたいものも、確認したいものも、その先に控えている。だから私はいま、ただ止まっているのではなく、進むために待っているつもりでいる。だが待つ時間が長くなるにつれて、その言い訳も少しずつ薄くなってくる。
気づくと、画面の光だけが部屋に残っていた。
窓の外はもう暗い。マグカップの底には冷えた茶が少しだけあり、机の端にはさっきまで読もうとしていたメモが裏返しのまま置いてある。私のほうはちゃんと夕方から夜へ進んでいるのに、画面だけが、同じ取得の途中をいつまでも保っている。
八時を過ぎたころ、進捗の数字がひとつ増えた。
九十二パーセント。
それだけだった。私はむしろ、その一パーセントにも満たないわずかな変化のほうが気味悪くなった。止まっているなら止まっているほうがまだましで、こうして忘れたころに、まだ続いているふりをされると、こちらまで終われなくなる。
私は思いきって画面を閉じようとした。
そのとき、小さな通知が右下に出た。
最新のデータを確認しています
そんな文言は、さっきまでなかったはずである。私は手を止めた。確認しているのは向こうなのか、こちらなのか、一瞬わからなくなったからだ。じっと見ているうちに、通知は音もなく消え、画面はまた何事もなかったように 取得中 へ戻った。
それ以来、終わらない取得画面を見るとき、私はなるべく進捗バーを見ないようにしている。
見ているあいだは、先へ進めないのがデータのほうなのか、自分のほうなのか、だんだんわからなくなってくるからである。