その夜、私は帰り道の角で、古いクリーニング店の写真を三枚撮った。
看板の文字が半分だけ消えていて、店の中はもう暗く、ガラス戸には向かいの街灯がぼんやり映っていた。べつに特別なものではない。ただ、その少し古びた青い看板の色が妙によかったので、立ち止まって、ついスマートフォンを向けたのである。
一枚目は手ぶれしていた。二枚目はまあよかった。三枚目は念のために撮った。
家に帰ってから見返すと、最初の二枚は見たままに写っていた。ところが三枚目だけが、ひどく暗い。店の輪郭だけはかろうじて見えるのに、ガラス戸のあたりだけが、まるで夜よりさらに深い色で塗りつぶしたように沈んでいる。
おかしいと思って拡大すると、その暗がりの中央に、細い白い筋が一本だけ見えた。最初は光の反射かと思ったが、どうもそうではない。縦に細く、少しだけ曲がっていて、まるで内側から、誰かが指を一本立てて、ガラスに当てているように見える。
その店は、前から空き店舗のはずだった。
気味が悪くなって、翌日の帰りにもう一度そこを見に行った。看板も、街灯も、ガラス戸も、昨夜のままである。ただ、戸の内側には、写真に見えたような白いものは何もなかった。私はその場でまた二枚だけ写真を撮った。二枚だけ、というのは、三枚目を撮る気になれなかったからだ。
家で見返すと、今度はどちらも普通に写っていた。少し安心して、例の暗い三枚目を消そうとした。ところが、削除画面を開いたとき、サムネイルのガラス戸のところに、小さく文字が出た。
撮影: 23:14
保存: 23:15
一分もあとの時刻になっている。
私はその写真を、まだ消さずに残してある。ただ、夜道で何かを撮るときは、三枚目だけは撮らないことにしている。