「やる気が出ない」というのを、最近よくつぶやくようになっていた。

仕事の続き、運動、勉強、片付け。やった方がいいと頭では分かっているのに、机の前に座っても手が動かない。スマホを見て、お茶を入れて、もう少しだけ休んでから、と思っているうちに夜になる。

ジャンル違いの 3 本の YouTube 動画から、面白いことが見えてきた。3 人とも「やる気が出ない時にどうするか」という同じ問いを扱っているのだが、返事の時間軸がまったく違う

今この瞬間の話、半年スパンの話、3 年スパンの話。同じ問いに、それぞれ別の時間の目盛りで答えている。順に紹介したい。


① いま — 「とにかくやれ」

1 本目は、1 分 51 秒の、いちばん短い動画だった。

語り手が言うのはこれだけだ。

やる気が出ない時の唯一最大の解決法は、とにかくやれ だ。

「0 から 1 にする」のがいちばん難しいので、深く考えるのをやめて、部屋が爆発するくらいの勢いで今すぐ手を動かしてしまう。タスクの見える化も計画も、動いた後にやればいい。

そしてもうひとつ、強調されているのが、やる気は後からついてくる という順序だった。私たちはよく順番を逆に考える。「やる気が湧いたらやろう」と思って待っているのだが、実際は やり始めると後からやる気が来る という構造になっているらしい。

これはいちばん近距離の処方箋だ。射程は 目の前の数十秒。考えるより先に、椅子を引いて手を伸ばす。


② 6 ヶ月 — 「Go ghost」

2 本目はがらっと角度が変わって、英語のコンピレーション動画。マイケル・フェルプスやジェイ・Z 風の発言を編集で繋いで、自己啓発のメッセージとして見せる構成だった。

中心にあるのが、こういう構えだ。

6ヶ月だけ、SNS で発信せず、姿を消して目標に集中しろ。

これを Go ghost と呼ぶ。やる気が続かないいちばんの原因は、夢を他人に話すことだと動画は言う。「うまく行くと思う?」と一言言われた瞬間に、植物に酸を撒くように、夢の地面が削られる

そのうえで動画は 3 つの言葉を並べる。

  • Never complain, never explain(不平を言わない、説明しない)
  • Keep it private until it’s permanent(確定するまで誰にも見せない)
  • Master the middle(始まりと終わりは応援される。中間で一人で戦え)

人が応援してくれるのは、新しいことを始めた時と、達成した時だけ。いちばんしんどい中間の数ヶ月 は、誰にも見られないところで黙々と続けるしかない。

これは中距離の処方箋だ。射程は 半年。①の「とにかくやれ」と違って、こちらは 環境 を作る話に近い。SNS を閉じ、夢の話を口外せず、結果が出るまで暗がりに潜る。


③ 3 年 — 「コンパウンドエフェクト」

3 本目は、ダレン・ハーディの『コンパウンドエフェクト』を 1 時間 22 分かけて解説する動画。タイトルの「コンパウンドエフェクト」は、日本語でいえば 福利効果 にあたる。

中心にあるのは、こういう数字の話だった。

瓶の中で 1 分ごとに 2 倍に分裂するコインがある。24 時間で瓶は満杯になる。 瓶が 半分 になるのは、いつだと思うか。 答えは 23 時間 59 分後 だ。

つまり成長はだいたい横ばいで、最後の最後で一気に立ち上がる。23 時間 55 分の時点では、まだ瓶の 3% しか溜まっていない。

これを動画は 凡人 vs 成功者 の 3 つの違いとして語る。

  • 凡人は タイムラグに耐えられない(1〜2 回やって変わらないと諦める)
  • 凡人は 本当の富を誤解する(一撃 10 万円に飛びついて、毎月 1 万の積み上げを軽視する)
  • 凡人は シンプルすぎて信じられない(「本を読め」「運動しろ」を信用しない)

例として出てくる「スコットとブラッド」の話が分かりやすい。同じ年収・同じ健康状態で始まった 2 人が、毎日 125kcal の差を 2 年半続けたところ、30kg の体重差 が生まれ、それが睡眠・仕事・夫婦関係へと 波及して人生全体が分岐する、というのだ。

これは長距離の処方箋だ。射程は 2〜3 年。①や②と違って、こちらは 時間そのものを味方につける 話になる。


まとめ

3 本を並べると、こうなる。

  • いま(数十秒)— 動作。考える前に手を動かす
  • 6 ヶ月(半年)— 環境。外との接点を切って暗がりで続ける
  • 3 年(数年)— 時間軸。福利効果は最後の数日で爆発する

同じ「やる気が出ない」という言葉に対して、3 人がまったく違う時間スケールで答えている。3 つはお互いに矛盾しないどころか、たぶん 積み重ねの関係 にある。今この瞬間に動けないなら、6 ヶ月の暗がりも、3 年の福利効果も始まらない。

逆に、毎日の動作が回り始めても、6 ヶ月の中間期を耐えられないと、福利効果は最後の爆発の手前で止まる。

「やる気が出ない」とつぶやくとき、本当に詰まっているのはどの時間軸なのか — まずそれを切り分けるところから始めるのがよいのかもしれない。

  • 今この瞬間に動けないだけなら、考えるのをやめて椅子を引く
  • 環境が応援してくれていないなら、SNS を閉じて 6 ヶ月だけ暗がりに潜る
  • 時間が短すぎて手応えがないだけなら、その横ばい区間を疑わずに通り過ぎる

返事は短くなくていい。長い時間がかかる返事もある、というのが、3 本を並べたときに見えてきたことだった。


参考にした動画